》たことまで空想《くうさう》して見た。
「何んだか悲《かな》しい唄ぢやないか。」といふと、
「然《さ》うだね。僕《ぼく》は何んだか胸苦《むなぐる》しくなツて來《き》たよ。」と儚ないやうな顏《かほ》をしていふ。
「何うして急《きふ》に舍《よ》して了《しま》ツたのだらう。」
「然うさね。」
其《それ》は永遠《えいえん》に解《と》けない宇宙《うちう》の謎《なぞ》でもあるかのやう。友と私とは首《くび》を垂《た》れて工場の前を通過《とほりす》ぎた。
「君《きみ》、此《こ》の頃《ごろ》躰《からだ》は何うかね。」と暫《しばら》くして私はまた友に訊《たづ》ねた。私|達《たち》は會《あ》ふと必《かなら》ず孰《どツ》ちか先《さき》に此《こ》の事を訊《き》く。一《ひと》つは二人|共《とも》躰に惡《わる》い病《やまい》を有《も》ツてゐるからでもあらうが、一つはまた面白《おもしろ》くない家内《かない》の事情《じゞやう》が益々《ます/\》其《そ》の念《おもひ》を助長《ぢよてう》せしむるやうになツてゐるので、自然《しぜん》陰欝《ゐんうつ》な、晴々《はれ/″\》しない、稍《や》もすれば病的《びやうてき》なことのみを考
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