めたまゝ手《て》にしてゐる故《せい》か、稍《やゝ》小さい色白《いろじろ》の顏は、ドンヨリした日光《ひざし》の下に、まるで浮出《うきだ》したやうに際立《きわだ》ってハツキリしてゐる。頭はアツサリした束髪《そくはつ》に白《しろ》いリボンの淡白《たんぱく》な好《このみ》。娘《むすめ》は歩《あゆ》みながら私の顏を凝《ぢつ》と見入ツた。あゝ其の意味深い眼色《めいろ》!私は何んと云ツて其を形容《けいやう》することが出來やう。媚《こび》るやうな、嬲《なぶ》るやうな、そして何《なに》かに憧《あこが》れてゐるやうな其の眼……私は少女《せうぢよ》の其の眼容《まなざし》に壓付《おしつ》けられて、我にもなく下を向いて了つた。其の間《うち》に娘は艶《なまめ》かしい衣《きぬ》の香《か》を立《た》てながら、靜《しづか》に私の側《はた》を通ツて行ツた。
「フアゾムレス アイズ!」
私は幾度となく此の言葉《ことば》を心の中《なか》で繰返《くりかへ》して見た。
少女の眼は滅《め》入り込《こ》んだ私の胸を輕《かろ》くさせた。今までの悲哀《ひあい》や苦痛は固《もと》より其によツて少しも減《げん》ぜられたといふ譯《わけ》で
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