はないが、蔽重《おつかさ》なツた雲《くも》の間《あひだ》から突然《とつぜん》日の光《ひかり》が映《さ》したやうに、前途《ぜんと》に一抹《いちまつ》の光明《くわうめう》が認《みと》められたやうに感じて、是《これ》からの自分の生活というものが、何《なん》だか生効《いきがひ》のあるやうに思はれた。若《わか》き血潮《ちしほ》の漲《みな》ぎりに、私は微醺《びくん》でも帶《お》びた時のやうにノンビリ[#「ノンビリ」は底本では「ノンドリ」]した心地《こゝち》になツた。友はそんなことは氣が付《つ》かぬといふ風《ふう》。丁度《てうど》墓門《ぼもん》にでも急《いそ》ぐ人のやうな足取《あしどり》で、トボ/\と其の淋しい歩《あゆみ》を續《つゞ》けて行ツた。



底本:「三島霜川選集(中巻)」三島霜川選集刊行会
   1979(昭和54)年11月20日発行
初出:「新声」
   1908(明治41)年2月1日号
※新字と旧字の混在は、底本通りとしてました。
入力:小林 徹
校正:松永正敏
2003年12月6日作成
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