はあツたが、色の白い髮の濃い、ふツくりした[#「ふツくりした」に傍点]顏立であツた。細い美しい眉も、さも温順《すなほ》に見えたが、鼻は希臘型《ギリシヤがた》とでもいふのか、形好く通ツて、花びらのやうな唇は紅く、顎《あご》は赤子の其のやうにくびれてゐた。眼はパツチリした二皮瞼《ふたかはめ》で、瞳は邪氣無《あどけな》い希望と悦《よろこび》とに輝いてゐるかと見られた。
 風早學士は妙に此の少女に心を引付けられた。で、其の飛出したやうな眼で、薄氣味の惡い位ヂロ/\少女の顏を見ながら、其の儘行き過ぎて了はうとして、ふと立停ツた。立停ると、慌《あわただ》しくポケットを探りながら、クルリ踵《きびす》を囘《かへ》して、ツカ/\と林檎を賣る少女の前に突ツ立ツた。そして、
「林檎を呉《くれ》ンか。」と聲を掛ける。
 少女は、紺のつツぽ[#「つツぽ」に傍点]の袖の中へ引ツ込めてゐた手を出しながら、「幾個ね」
 と艶《つや》ツ氣《け》なしに訊《き》く。
「幾個ツて……」を風早學士は、鳥渡《ちよつと》まごツき[#「まごツき」に傍点]ながら、「一ツで可いんだ。」
「一ツかね。」とケロリとした顏で、學士の顏を瞶《み
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