》たる意氣に日毎酒を被《あふ》ツて喧嘩を賣※[#「廻」の正字、第4水準2−12−11、226−中段6]ツた元氣な勞働者もあツたらうし、空想的の功名に※[#足扁に「宛」、第3水準1−92−36、226−中段7]《あが》いて多大の希望と抱負とを持ツて空しく路傍に悲慘なる人間の末路を見せた青年もあツたであらう。更にまた一夜に百金を散じた昔の榮華を思出して飢《うゑ》と疾《やまひ》とに顫《をのゝ》きながら斃れた放蕩息子《のらむすこ》の果《はて》もあツたらうし、奉ずる主義の爲に社會から逐《お》はれて白い眼に世上を睨むでのたうち[#「のたうち」に傍点]※[#「廻」の正字、第4水準2−12−11、226−中段13]りながら憤死した志士もあツたであらう。中にはまた、堅い信仰を持ツて泯然《びんぜん》として解脱《げだつ》した宗教家もあツたらうし、不靈な犬ツころの如く生活力が盡きてポツクリ斃れた乞食もあツたらう。是等種々に異ツた性質と境遇と運命とを持ツた人間が、等しく「屍體」と名が變ツて生物の個體として解剖臺の上に据ゑられる、冷たくなツて、素ツ裸にされて。繰返していふが、此の人等は決して變ツた人ヤでも何んでも
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