、そして少し得意な説を吐く時には、屹度《きつと》「解るか。」と妙に他を馬鹿にしたやうに謂ツて、ずらり學生の顏を見※[#「廻」の正字、第4水準2−12−11、224−下段6]したものだ。見※[#「廻」の正字、第4水準2−12−11、224−下段7]して置いて、肩を搖《ゆす》ツて、「だが、此の位のことが解らんやうぢや、諸君の頭はノンセンスだ。」といふ。これが甚《ひど》く學生等の疳癪《かんしやく》に觸ツた。それで其の講義は尊重してゐたけれども、其の人物に對しては冷《ひや》ツこい眼で横目に掛けてゐるといふ風であツた。雖然《けれども》學士の篤學なことは、單に此の小ツぽけな醫學校内ばかりで無く、廣く醫學社會に知れ渡ツた事柄で、學士に少しのやま[#「やま」に傍点]氣と名聞《みやうもん》に齷齪《あくせく》するといふ風があツたならば、彼は疾《とう》に博士になツてゐたのだ。勿論學校からも、屡ゝ彼に博士論文を提出するやうに慫慂《しようよう》するのであツたけれども、學士は、「博士論文を出して誰に見て貰ふんだ。」といふやうなことを謂ツて、頭《てん》で取合はうとはしなかツた。學士は一元哲學の立場からして、極端な死
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