――それはまるで一秒間と***********さであった。
「いやあッ!」と、魂をさらわれて、豆腐粕みたいにフヌケ切った時計屋でさえも、脂だらけの、はっきり見分けのつきそうもない眼玉を、南瓜頭と一緒くたに、樫の木みたいにごつごつした股倉につッ込んでしまった位だ。
若者はただ、火花のようにカッとした。それでそのまま、焼火箸に尻餅をついたような撥ね上がりかたで、闘犬みたいな唸り声をたてて黒眼鏡に夢中で飛びかかった。それまではよかったが「うぬ!」と、相手が短かく喚めいたと同時に、彼はドアの外へ右から左にそのまま吹ッ飛んで、雑草のなかに********ぶざまな格好で丸まってしまった。そして気がついた時、若者は焼火箸を尻の下に敷いた時よりも、もっと素迅い動作と、地球の外へ吹ッ飛ぶような覚悟で遁げ出した。一体どうしたというのだ!
正念寺の門前には、露西亜の酒場があることに変りはない。
だが、今日という今日こそ『大連』は、カルバスの元も子もすっかり綺麗薩張りと、ウォツカの酔いとひっかえてぐでんぐでんに酔払っていた。
「タワリシチ!」こう怒鳴ると、脂っぽい針松の木椅子を蹴とばして、彼は鉄砲玉のよ
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