理學原理』とかミルの『論理學體系』とかいつたものを丸善から求めてきて、ぼつぼつ繙いてゐた。それは日本の哲學書出版に時代を劃した岩波の『哲學叢書』が刊行され始めた時期であつて、その中のヴィンデルバントのものを紹介した『哲學概論』を讀んでみたが、正直にいふと、よく理解できなかつたのである。三年生の時、小さな會を作つて、ヴィンデルバントの『プレルーディエン(序曲)』の中の『哲學とは何か』を謄寫版刷りにして速水滉先生から讀んで戴いた。高等學校時代、私は直接には速水先生から最も多く影響を受けた。心理學の本を比較的多く勉強したのもそのためであるが、最も興味を感じたのは、ジェームズの『心理學原理』であつた。そしてこれは今も私が人に勸めたい本の一つである。ヴィンデルバントの『哲學概論』は概論中の白眉として定評のあるものであり、ぜひ目を通さねばならぬものではあるが、初めに讀むものとしては少しむづかしいであらう。この人のものとしては寧ろ初めに『プレルーディエン(序曲)』を讀むのがよいと思ふ。これはそれ自身立派な入門書と見ることができる。ヴィンデルバントの哲學概論と共にわが國で知られてゐるディルタイの『哲學
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