るか、聞いてみるがいゝ。
(それで、今、若くて、利口で、美しい人を求めてゐる。本当に求めてゐるが、誰も戯談《じやうだん》にして取合はないし、女など居ないでも、さう淋しくないが、その内、恋人でもできて、矢張り、独身は、本当だつた、それなら、と後悔する人の無いやうに、序《ついで》ながら、広告しておく)
所が、僕の妻、即ち、子供の母が(子供の母は必ずしも、妻では無い)彼女の若い時分、二十七歳の時(現在四十八歳)東京へ脱走してきた、のである。父も食客を置いてゐるから、僕もおいてやれと、置いてゐる内に、何《な》んしろ、二十七と、二十一歳の美少年とだから、かなはない。
そこで、学校へ納める月謝を、家賃へ廻して、家をもつた。(卒業しなかつたのは、このせゐである)それまではよかつたが、卒業すると、学資は絶えるし、子供が一人生れてくるし、細田源吉と田中純とは、春陽堂へ、保高《やすたか》徳蔵は、読売へ、宮島新三郎はパトロンがゐるし、西条八十には女学生のフアンが――取残されたのは、青野|季吉《すゑきち》と、僕とで、青野は、毎日夫婦喧嘩をしては、その報告と、休養とに、出てくる。
本を売り、着物を入質《い
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