から、私の郷土の大阪の、私の知人も、私を単なる文人と考えているようだが、私は科学、軍事、経済、社会などに対して相当の抱負と知識とをもっているものである。私は他日それを小説の形式によって公表するであろうが、それに先立って、私の郷土、大阪に於て、私の郷土人、大阪人の為に、その全部を披瀝して何かを、大阪及び大阪人に与えたいと、考えている。
私は、女と、食物を、論じると同時に、対支貿易と、到来すべき世界的ダンピングも論じるであろうし、小春治兵衛を説くと共に、島徳七氏について云うかもしれない。歩くと云っても、ただの歩き方とは歩き方がちがう、頭で歩くんだ。少し、禿げてはいるがね。
大阪人
私は、大阪を出てから、二十年になる。二十年、東京に住んでいた。丁度、生れた所に半分、他郷に半分、という訳である。
氏より育ち、とか、孟母三遷の教えとか、人間は、環境に支配されるとか、朱に交わればとか、教育は第二の天性とか――いろいろの言葉があるが、私は、一体、大阪人なのか、東京人なのか?
大阪で生れたから、生れた時から、掌を握っていたとか、二つの時に「こんちは、儲かりまっか」と、云ったとか――いつ
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