よって、遊んで食えるそうである。子孫の為に残すなら、これはいい財産で、一寸売れないだけに、子供の食いはぐれが無い。大阪の中位の、金持共は、郊外へ、大仏だの、観音だのをいろいろ建てて、賽銭でくらすがいい。天守閣などもこの意味で、一番経済的であって、一番下らない金の使い道である。もう少し、明瞭《はっきり》としていたなら、当然大阪の史蹟の整理と保存とを初めなくてはならない。
 少し、論が、前へ戻ったがこれは私が、同じ道を戻って行くからであろう。天王寺から一心寺の方へ(何という甘味のない名だろう、一心寺)、それから、公園の方へ。ここには、市民から馬鹿にされている美術館が建っている。何の市長の時に誰が賛成して建てたのか知らぬが、この位市民と没交渉の美術館も無い。一番いい方法は水を充たして水族館にすることだが――文学にさえ冷淡な、大阪市民に、美術館を与え、与えっ放しで教育もしない所が、役人の役人たる所以であろう。
 年度末になって予算が余ると、不用な品を買込んで、一文も残らず使ってしまうのが日本の役所である。そうしないと、来年の予算を同額だけもらえぬというのであるが、凡そ、この位、人民を踏みつけに
前へ 次へ
全69ページ中31ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
直木 三十五 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング