ということは、何んなに、損をしているか判らない。今日の科学の発達は、研究費の有無だけである。芸術なんか何うだっていいから、私は、大阪の人々に、せめて東京の理化学研究所程度の科学研究所を設立してくれと頼みたい。幾億円の富が、そこから生れるか? 天然物の少い日本は、科学的発明以外に何をも産出するものはないではないか?
 文化的の心得があると、つまりこういうような立派な物の考え方をすることができる。大衆物の、ヤッ、エイッを書いていたって、ちゃんと、経済、科学のことまで知っている。
 日本の経済学者、実業家なんて代物は、二年位前迄、来年になると景気はよくなる。経済は周期的に上下するもので、などと云っていたが、この頃、こんな事は云わなくなった。定めて、恥かしいだろうが、私はその当時から日本のような貧弱な国は、この不景気が常態だ、と云ってた。大阪人など、何を考えているか知らぬが、此考えに基礎を置いて、科学的発達に志す外、日本及び大阪の発達はない。この卓説の、もっと具体的なことは、大阪市の顧問にでもなってから発表する。文化的とは、こういう考え方もする事だ。単に、シュークリームのみでもない。軽蔑すべか
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