と栗の関係は、何か二人連れの坊さん、大坊主に小坊主の関係と神秘的な関係でもあるんですかな?」
商人の眼玉は、蝸牛《なめくじ》の眼玉のように飛び出した。彼はまったく、この見知らぬ男に今にも飛びかかりそうに見えた。が、遂に怒りながら吃り出した。「お前がどんな関係があるのか知らないが、もし知り合いの間なら、言ってくれ、うちの林檎をもう一ぺんひっくりかえすような事があれば、坊主であろうと何であろうと、あたまをたたき割ってやるからって」
「へへえ? そいじゃあ奴等は君んとこの林檎をひっくりかえしたのかね?」と探偵は、同情してこう言った。
「あいつらの一人がやったのさ」と亭主はポッポッと湯気を立てながら「何しろ通《とおり》一ぱいぶちまけちゃったんだ。阿呆め、自分で拾い集めないで行ったら、ふん捉《つか》まえてやるところだった」
「その坊主達はどっちの方角へ行ったかね?」
「あの二つ目の通を左へ曲って、広場を突《つっ》きって行ったらしいよ」と亭主はすぐ答えた。
「いや、ありがとう」ヴァランタンは、言葉とともに妖精のように姿を消した。第二の広場の片側で巡査を見付けると、彼は早速訊ねた。「巡査君、重大事
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