青玉の十字架
THE BLUE CROSS
チェスタートン Chesterton
直木三十五訳
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)格恰《かっこう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)六|呎《フィート》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)対照で[#「対照で」は底本では「対象で」]
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朝の空を彩る銀色のリボンと、同じように海上を飾る緑色のリボンとの中を、船は進んで、ハーウィッチの港に着いた。すると、人々は蝿の群でもあるかのように、ちりぢりに各々目ざす方へと散って行った。その中に、今我々が語ろうとする男は、別に特別に注意を惹くものではなかったし――というよりも、注意を惹かれまいとしているのだった。彼の身のまわりには、祭りの日のような陽気さの中に、顔に浮んだ役人じみたもっともらしさがあるだけで別に注意すべきものは何もなかった。彼の服装はと言えば、うすい灰白色の短衣に純白のチョッキをつけ、青鼠色のリボンのついた銀色に光る麦藁帽を冠っていた。その対照で[#「対照で」は底本では「対象で」]、彼の面長の顔は黒味を帯びて
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