まらぬ事をきっかけに、雨天運動場の中で、喧嘩を起した。私は、旗竿をとって暴れ込んだ。四年の連中は、何が、何んだかわからないし、根が大阪の坊ちゃんが多いのだから、一時に逃げてしまって、喧嘩の対手が、忽ち無くなってしまった。そこへ、先生が来たが、喧嘩をしたのでない、しようとしたら逃げたので、――私は、旗竿をもって立っているだけである。
「喧嘩したんか」
「いいえ」
「その旗竿は」
「もってるんです」
「何んでもっておる」
「そこにあったから、もってます」
「もってはいかん」
「はい」
それ以来、この中堅会が、羽振りを利かすようになって、四年になった時
「五年は、来年卒業するから、もう、学校には縁が薄い。四年が、学校の中心だ」
という理屈をつけたが、夕陽丘で、女学校の柵へ小便引っかけたのは、この時分である。
その代り、この年から、大阪府下中学の陸上運動会では、市岡が、いつも優勝で、とうとう三年つづけて、優勝旗をとってしまった。この優勝旗は、三年つづけて勝てば、永久にその校に止《とど》める、というのであったが、三年つづけると
「それは困る」
と云い出して――私らは卒業後であったが、大い
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