死までを語る
直木三十五
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)編輯《へんしゅう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)植村与一兵衛宗春|尉《じょう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]
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自叙伝
一
大草実君が
「直木さん、九月号から一つ、前半生記と云うような物を、書いてくれませんか」
と云ってきた。私は、今年四十二年六ヶ月だから「前半生」と同一年月、後半世も、生き長らえるものなら、私は八十五歳まで死なぬ事になる。これは多分、編輯《へんしゅう》局で、青年達が
「直木も、そう長くは無いらしいから、今の内に、前半生記みたいなものを、書かしては何《ど》うだろう」
と、云って、決まった事にちがいない。そして、大草実は
(長くて一年位しか保つまいから、丁度、これの終る頃くたばる事になると、編輯価値が素敵だ)
と、考えたのであろう。
全く私は、頭と、手足とを除く外、胴
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