、彼はどんな人間でもさがし出した。そして誰も来なかったと彼に言った。そしてこの三人が、ニヤニヤしながら玄関口に頑張っていた金ピカのいかめしい使丁の周囲に集った時、意見は決定的のものとなった。
「私はこの家に用事のある人なら公爵だろうと塵芥屋《ごみや》であろうと、一応たずねてみる権利を持っております」と金ピカの使丁がいった「この方が、お出かけになってから訪ねて来た人は誓って一人もございません」
局外者のように皆のうしろに立って舗道の下をつつましやかに眺めていた師父ブラウンが謙遜げにこういい出した。「すると、雪が降り出してから、階段を上り降りした者があるか? 雪はわし等がまだフランボー君のところに居った時に降始めたんじゃからな」
「旦那、誰も来た者なぞありますものか」と使丁は、威厳をもっていった。
「それじゃこれは何であろうか?」坊さんは魚のように取とめのない眼付で地面を見つめた。
外の者もまた、眼を地上に落した、そしてフランボーは激烈な叫声を発して、フランス式の身振りをしてみせた。なぜといって、金筋の使丁の警衛する玄関口の真ん中の石床の上に、その巨人のような使丁の横柄にかまえた両足の
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