。先頭のが、槍を片手でさし上げて、何か叫びながら、少し走ると、倒れてしまった。
二人が、元のように地に伏した。
「馬鹿っ、出るなと云うに」
土方が叫んだ時、残りの者が、皆倒れてしまった。
「退却っ、このまま、這って退却っ」
土方は、このまま日が暮れたら、全滅すると思った。
「退却っ」
鋭い声がしたので、その方を見ると、近藤|勇《いさみ》の倅《せがれ》、周平が、白い鉢巻をして、土方を睨んでいた。
「犬死してはならぬ」
土方が、睨み返して怒鳴った。
「射すくめられて戦えぬなら、いっそ戦へ出ん方がよろしい」
周平は、こう叫ぶと
「進め」
片手を突いて立上ると、右手の槍を高くさし上げて
「かかれ」
と、叫んだ。軒下の兵が、走り出した。両側から、二三十人ずつも、往来へ、雪崩《なだ》れ出した。銃声が激しくなって森を白煙で隠す位になると、倒れる者、よろめく者、逃げて入る者、伏せる者、みるみる内に、七八人しかいなくなった。
「周平っ」
土方は、近藤勇が、大阪で疵《きず》養生をしていていないからその間に、周平を殺しては、困ると思った。そして、立上りかけると、周平がよろめいて、膝をついた
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