近藤勇と科学
直木三十五

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)突《つん》のめされた

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)腹|這《ば》いに

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#改ページ]
−−

   上篇ノ一

 すぐ前に居た一人が突《つん》のめされたように、たたっと、よろめいて、双手で頭を抱えると、倒れてしまった。
「伏《ふ》せっ、伏せっ、伏せっ」
 土方《ひじかた》は、つづけざまに、こう怒鳴《どな》って、大地《だいち》へ伏してしまった。
「畜生、やられた」
 土方の頭の上で、人間の声というよりも、死神の叫びのような絶叫をしたので、振向くと、口から血の泡を流しながら渋沢が、槍《やり》を捨てて、鎧《よろい》の紐《ひも》を引きちぎろうとしていた。
「何《ど》うした?」
 渋沢は、眼球を剥出《むきだ》して、顔中を痙攣《けいれん》させながら、膝《ひざ》を突いて、土方へ倒れかかった。土方が避けたので、打伏しに転《ころ》がると、動かなくなった。
「撃たれたらしいが、何処《どこ》を――」
 と、思ったが見当がつかなかった。

次へ
全31ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
直木 三十五 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング