が、洋式鉄砲は、二三町位で利く。一刀流も、無念流も無い。鎧も、甲も、ぷすりぷすりだ」
「躾《しつ》けられんか。銃口《つつぐち》を見て何の辺を覗っているか――」
「あはははは」
土方は、大笑いして
「蛤《はまぐり》御門の時より、一段の進歩だ。それに味方の伝習隊が役に立たぬ」
「味方の鉄砲が役に立たぬに、敵の鉄砲が」
「シャスポーを、フランス式は使用しているが、何んでも幕府に金の無い為、安物を買ったとかで、銃身の何《ど》っかが曲った廃銃まであるという噂もあった」
「有りそうな事だ。そして、誰が討死した」
「うむ――周平が、山崎が、藤堂が――」
「皆、鉄砲でか」
「うむ」
近藤は、暫く、黙っていたが
「何んとか、法の無いものか? 俺は、あると思えるが――」
と、云うと、自分の肩の鉄砲疵の事を思い出した。
(これは、不意討だった。前に、覗っている奴が見つかったなら、撃《う》たれはしまい。謙信は、鉄砲ぐるみ、兵を斬った事さえある)
土方は、懐の金入から、小さい円い玉を出して
「これが、弾丸だ。わしの前へ落ちた奴を、ほじくり出してきた。もう二寸の所で、やられる所だった」
近藤は、じろっと
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