へ、だんだん凭《もた》れ込みながら、
「自分の意志のままになるロボットもいいし、自分の意志以外の方法を教えてくれる男もいいわ。ロボットが、俊太郎が出来て以来、女性の感覚は、二倍によくなったわ。」
夫人は、朗かに笑って、じっと男の眼をみつめた。
四
「このベッドは、御前と、俺とだけのものにしておきたい。」
俊太郎は、凹んだ眼の中から、力のない表情でいった。
「ええ。」
「ここだけは、汚してはいけない。」
「誓うわ。」
「そうかい――じゃ、このロボットを大事にしてくれ。俺だと思って。」
「随分、精巧なのね。」
皮膚の感じ、体温、その素晴らしい機能、その微量の電気による魅惑的な刺激、それは、機械によって、感じる――機械によってのみ感じえられる、女性にとっても驚くべきものであった。
「俺は、機械技師だが――このロボットに対してだけは、生理学的の研究を加えてある。」
「そうらしいわね。」
「それから――同時に、俺は、霊魂の神秘を、信じる事ができる。」
「霊魂?」
「ロボットを愛さなくなれば、彼奴《あいつ》は、御前に復仇する。」
「あのロボットが――」
「ああ。」
「どんな復讐?
前へ
次へ
全20ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
直木 三十五 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング