ロボットとベッドの重量
直木三十五

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)蝕《むしば》まれ

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)じゃ[#「じゃ」は底本では「じや」]

×:伏せ字
(例)模範的××保持者だね
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    一

「お前、本当に――心から、俺を愛しているかい。」
 KK電気器具製作所、ロボット部主任技師、夏見俊太郎は病に蝕《むしば》まれ、それと悪闘し、そして、それに疲労してしまった顔と、声とで、その夫人に、低く話かけた。(また――病人って、どうしてこんなに、執拗《しつこい》ものなのかしら)
 夫人は、頭の隅で、一寸、こう眉を、ひそめてから、
「ええ、愛していますとも。」
 夫人の頬は、新鮮な果物のように、艶々《つやつや》しく、黄金《きん》色の生毛《うぶげ》が、微かに光っているし、その腰は、典雅な線で、その豊満さを現しているし、それから、その下肢は、張切って、滑かだった。
「俺が、死んだなら――独身ではおれまい。」
 夫人は、病気前の、病気中の、狂的な、………、…………………を思い出して、肌を、蒼寒くした。脂肪気の無くな
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