。夫人が、
「愛という言葉も判るわ。」
「そういう単語は、返事ができるんですね。」
「簡単な、恋愛用語だけは――」
「蹴飛ばしてやろうか。」
ロボットは、黙っていた。男は、ロボットが、返事もしないで、微笑しているのを見ると、自分が、蹴飛ばされそうな気がした。
「気味が悪いですねえ。魂があるようだ。」
夫人は、ベッドのカーテンを開けた。そして、腰をかけて、
「ここで、話しましょう。」
と、いって、椅子を、ベッドの横へ置いて、クッションの上へ、肱《ひじ》を突いた。
七
「ロボめ、じっと、見ていやあがる。」
男は、椅子から、立上った。そして、椅子を、カーテンの外へ出して、カーテンを引いた。
夫人は、大きいクッションの上へ、身体を凭れさせて、片脚を、ベッドの外に、垂れていた。男は、ベッドの縁に、腰をかけて、
「僕は――」
情熱的な眼で、夫人を見た。夫人は、頭を、クッションの中へ埋めて、細く、眼を開いて、
「何あに。」
それは、牝猫のような、媚と、柔かさを含んだ声であった。男が……
「ロボは、接吻ができますか。」
「一種だけなら、簡単な――」
「じゃ、それは、人間の方が
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