、有利なんですね。」
「そうよ。」
 男は、夫人に近づいた。そして、ベッドの上へ、深く、腰かけた。そして、夫人の方へ手を廻した。
「いけない。」
 夫人が、頭を振った。それは、拒絶の外観をもった、誘惑的な、媚態の一種にすぎなかった。
 ロボットは、ベッドからの信号と同時に、真直ぐに、それは、俊太郎の計算通りに、正確に、進んできた。そして、カーテンを、頭と、身体とで押分けて入って行った。
「ロボさん、来ちゃいけない。」
 と、夫人が叫んだ。男が、
「馬鹿。」
 と、叫んだ。ロボットは、両手を拡げた。
「どうするの。」
 と、夫人が叫んだ時、ベッドぐるみ二人を抱くように、大きく手を拡げて、二人が、蒼白《まっさお》に――それは、奇怪な、ロボットの行為に、気味悪さを感じて、骨の髄から、恐怖に、身体を冷たくした瞬間――その、軟かい、だが、力強い手で、二人を、抱きしめてしまった。
「いけない、放して。」
 夫人は、ロボットの手から、腕を抜こうとした。男は、肩の骨の上から抱えられて、右手で、ベッドの枠を握りながら、全身の力で、抜出そうともがいていた。夫人は、脚で、空を蹴ったり、ロボットを蹴ったり、顔
前へ 次へ
全20ページ中18ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
直木 三十五 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング