んな、馬鹿馬鹿《ばかばか》しい感情はないですが、ロボを愛するという事は、結局、僕に、資格がない、という事を語っていますからね。侮辱の一種だと思いますよ。」
「じゃ、妾《わたし》が、このパイプを愛しても。」
「パイプはちがいますよ。」
「そういえば、そうね。愛する形式と、感情の変った手遊《おもちゃ》が、妾には、一つ増えたわけね。――そういえば――どういったらいいんでしょう。確かに、可愛いいわ。妾の意思がそのままに通じるでしょう。だから、半分は、自分を愛しているようなものね。自分が、両性を具備したような、妙な、感覚と、感情とは、たしかにあるわ。そして――感覚は、刺激的な事ほど、喜ぶでしょう。異状な感覚ほど――妾、あのロボさんの、金属の香が、好きになったの、冷たい、くすぐったい、――」
体臭に近い、獣的な香水の匂が、漂っていた。夫人は、ロボットの胸に描いたのと同じ、草花のデザインを、青と、朱《あか》と、紫とで、化粧した胸に描いていたし、露出した脚には皮膚の上へ、鮮かな塗料で、幾筋もの、線が引かれていた。それは、足を長く見せると同時に、魅惑的な、肉体装飾でもあった。
「それから、人間の力って
前へ
次へ
全20ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
直木 三十五 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング