》の奧の方でも採れた。
鳥はつぐみ[#「つぐみ」に傍点]が早くから食へた。鳥小屋が山の處々にかけてあつて、そこに町の人達はよく一日遊びに出かけたりした。運が好いと隨分澤山に獲れるといふことであつた。その他、鳥の種類はかなりに多い。雉子、山鳥なども町の料理屋の膳にいつも上つた。
茸類では、松茸は早松茸《さまつだけ》だけである。初茸も山にはない。町に賣りに來るのは、皆もつと下の端山や野山で採れるのを持つて來るのである。千茸《ちたけ》は七月頃に旨い。八月すぎると、まひ茸[#「まひ茸」に傍点]なども出る。栗もだし[#「栗もだし」に傍点]、楢もだし[#「楢もだし」に傍点]なども澤山に採れる。椎茸も出る。
鮎はない。此處で食ふ鮎は、皆|阿久津《あくつ》附近の鬼怒川から持つて來るのである。その代り、岩魚《いはな》がゐる。かじかがゐる。赤腹《あかつぱら》がある。中禪寺湖では大きな驚くやうな鰻が獲れた。鱒は自然生ではないが、秋はかなりに旨い。
山に住んでゐる獸は、日光の町ではさう多く口にすることは出來ないが、裏山から鬼怒川の谷の方へ行くと、あらゆるものがゐる。熊もゐれば山猪《しゝ》もゐる。夏でも
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