日光
田山花袋

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)野州《やしう》は

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)山|獨活《うど》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「くさかんむり/(酉+隹)/れんが」、第3水準1−91−44]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)まご/\すると
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

    一

 野州《やしう》はすぐれた山水の美を鍾《あつ》めてゐるので聞えてゐる。水石の美しいので聞えてゐる。深い溪谷の多いので聞えてゐる。雲煙の多いので聞えてゐる。
 中でも、日光の山水を持つた大谷《だいや》川の谷と鹽原の勝を持つた箒川《はうきがは》の谷とが一番世に知られてゐる。しかし、この他に鬼怒川《きぬがは》の大きな溪谷のあることを忘れてはならない。
 しかし、何と言つても一番すぐれてゐるのは大谷《だいや》の峽谷だ。電車が通じ、凉傘《パラソル》が日に照り、都會の人々を乘せた
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