放つて、其死体に取附いて泣いた一場の悲劇!
 其鋭い声が今も猶耳に聞える。
 午後になつて、漸《やうや》く長野から判事、検事、などが、警察官と一緒に遺つて来て臨検したが、その溺死した田池《たねけ》がいかにも狭く小さいので、いかに酔つたからとて、こんな所で独《ひと》りで溺れるといふ訳は無い。これには何か原因があるであらうと、中々事情が難かしくなつて、其時傍に居た二三人は、事に寄ると長野まで出なければならぬかも知れぬといふ有様。それにも拘らず溺死者の死体は外に怪しい箇処《ところ》も無いので、其儘受取人として名告《なの》つて出たかの娘つ子に下渡《さげわた》された。
 半日水中に浸けてあつたので、顔は水膨《みづぶく》れに気味悪くふくれ、眼は凄《すさま》じく一所を見つめ、鼻洟《はな》は半《なかば》開いた口に垂れ込み、だらりと大いなる睾丸《きんたま》をぶら下げたるその容体《ていたらく》、自分は思はず両手に顔を掩《おほ》つたのであつた。
「それにしても、娘《あま》つ子《つ》はあの死骸を何うしたであらう。村では、あの娘つ子の手に其死骸のある中は、寺には決して葬らせぬと言つて居つたが……」
 かう思つて
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