重右衛門の最後
田山花袋

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)何《ど》ういふ

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一度|猟夫手記《れふふしゆき》の中に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「冫+影」、333−上−9]気《けいき》

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いろ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

     一

 五六人集つたある席上で、何《ど》ういふ拍子か、ふと、魯西亜《ロシヤ》の小説家イ、エス、ツルゲネーフの作品に話が移つて、ルウヂンの末路や、バザロフの性格などに、いろ/\興味の多い批評が出た事があつたが、其時なにがしといふ男が急に席を進めて、「ツルゲネーフで思ひ出したが、僕は一度|猟夫手記《れふふしゆき》の中にでもありさうな人物に田舎《ゐなか》で邂逅《でつくは》して、非常に心を動かした事があつた。それは本当に、我々がツルゲネーフの作品に見る魯西亜の農夫そのまゝで、自然
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