前に永久《とこしへ》に降伏し終るであらうか」
「或は謂《い》ふかも知れぬ。これ自然の屈伏にあらず、これ自然の改良であると。けれど人間は浅薄なる智と、薄弱なる意とを以て、如何《いか》なるところにまで自然を改良し得たりとするか」
「神あり、理想あり、然れどもこれ皆自然より小なり。主義あり、空想あり、然れども皆自然より大ならず。何を以てかくいふと問ふ者には、自分は箇人《こじん》の先天的解剖をすゝめようと思ふ」
少時《しばらく》考へて後、
「重右衛門の最期《さいご》もつまりはこれに帰するのではあるまいか。かれは自分の思ふ儘《まゝ》、自分の欲する儘、則ち性能の命令通りに一生を渡つて来た。もしかれが、先天的に自我一方の性質を持つて生れて来ず、又先天的にその不具の体格を持つて生れて来なかつたならば、それこそ好く長い間の人生の歴史と習慣とを守り得て、放恣《はうし》なる自然の発展を人に示さなくつても済むだのであらうが、悲む可《べ》し、かれはこの世に生れながら、この世の歴史習慣と相容るゝ能はざる性格と体とを有《も》つて居た」
「殊に、かれは自然の発展の最も多かるべき筈《はず》にして、しかも歴史習慣を太甚
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