威嚇《おど》すのが習《ならひ》。村方では又火でも放《つ》けられては……と思ふから、仕方なしに、言ふまゝに呉れて遣る。すると好気《いゝき》に為つて、幅《はゞ》で、大風呂敷を携《たづさ》へて貰つて歩くといふ始末。殆ど村でも持余した。それがまだ其中は好かつたが、ある時ふと其感情を損《そこ》ねてからと言ふものは、重右衛門|大童《おほわらは》になつて怒つて、「何だ、この重右衛門一人、村で養つて行けぬと謂《い》ふのか。そんな吝《けち》くさい村だら、片端から焼払つて了へ」
と酔客の如く大声で怒鳴つて歩いた。
で、今回の放火騒動《ひつけさわぎ》。
九
山県の家の全焼したあくる日は、益々警戒に警戒を加へて、重右衛門の行為は勿論《もちろん》、その娘ツ子の一挙一動、何処《どこ》に行つた、彼処《かしこ》に行つたといふ事まで少しも注意を怠らなかつた。否、消防の人数を加へ、夜番の若者を増して、十五分毎には柝木《ひやうしぎ》と忍びとが代る/″\必ず廻つて歩くといふ、これならば何《ど》んな天魔でも容易に手を下す事が出来まいと思はれる許《ばかり》の警戒を加へて居て、それは中々一通の警戒ではないのであ
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