倒《ひきずりたふ》し、拳《こぶし》の痛くなるほど、滅茶苦茶に撲《なぐ》つた。そして半死半生になつた女房を尻目にかけて、其儘《そのまま》湯田中へと飛んで行つた。そして、酒……酒……酒。
 で、これからと言ふものは、重右衛門は全く身を持崩して了つたので、女郎買を為《す》るばかりではない、悪い山の猟師と墾意に為《な》つて、賭博《ばくち》を打つ、喧嘩を為る、茶屋女を買ふ、瞬《またゝ》く間にその残つて居る田地をも悉《こと/″\》く人手に渡して、猶《なほ》其上に宅地と家屋敷を抵当に、放蕩費《はうたうひ》を借りようとして居るのだが、誰もあんな無法者に金を貸して、抵当として家屋敷を押へた処が、跡で何んな苦情を持出さぬものでもないと、恐毛《おぞけ》振つて相手に為《せ》ぬので、そればかりは猶其後|少時《しばし》、かれの所有権ある不動産として残つて居た。
 ある時かういふ奇談がある。
 かれはその三日前ばかりから、湯田中に流連《ゐつゞけ》して、いつもの馴染《なじみ》を買つて居たが、さて帰らうとして、それに払ふべき金が無い。仕方が無いから、苦情やら忌味《いやみ》やらを言はれ/\、三里の山道を妓夫《ぎふ》を引張
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