女郎買をやめて、小作人まかせに荒れて居た田地を耕し、人の為めに馬を曳《ひ》いて賃金を取り、養蚕《やうさん》の手伝をして日当を稼ぐなど、それは村の人が一時眼を聳《そば》だてる程の勤勉なる労働者と為つた
其頃である。稍《やゝ》その信用が恢復しようとした頃である。村に世話好の男があつて、重右衛門も此頃では余程身持も修《をさ》まつて来たやうだし、あゝ勤勉に労働する処を見ると、将来にも左程希望が無いとも云へぬ。一つ相応な嫁を周旋して、一層身が堅まるやうに為《し》て遣らうではないかといふ者があつたが、それに賛成する者も随分あつて、彼れかこれかといよ/\相応の嫁を探して遣る事と為つた。
其候補者には誰が為つたらう。
その頃、村の尽頭《はづれ》に老婆と一緒に駄菓子の見世《みせ》を出して、子供等を相手に、亀の子焼などを商《あきな》つて、辛うじて其日の生活を立てて行く女があつた。生れは何でも越後《ゑちご》の者だといふ事だが、其処に住んだのは、七八年前の事で、始めはその父親らしい腰の曲つた顔の燻《くすぶ》つた汚《きたな》らしい爺様《ぢいさま》も居つた相だが、それは間もなく死んで、今では母の老婆と二人暮
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