つた者まで撲り飛ばして、傷を負はせるといふ有様なので、後には誰も相手に為る者が無くなつて了つた。で、この親と子の間に少なからざる活闘が演じられたが、重右衛門は体格が大きく、馬鹿力があつて、其上意地が非常に強く、酒を飲むと、殆ど親子の見さかひも無くなつて了ふものだから、流石《さすが》の親達も終《つひ》には呆れ返つてこんな子息《むすこ》の傍には居られぬ、と一年|許《ばかり》して、又長野へ出て行つた。
 これからが重右衛門の罪悪史である。祖父は歿《な》くなる、親は追出す、もう誰一人その我儘《わがまゝ》を抑《と》めるものが無くなつたので、初めの中は自分の家の財産を抵当に、彼方《あつち》此方《こつち》から金を工面して、猶《なほ》その放蕩《はうたう》を続けて居た。けれど重右衛門とて、丸きり意識を失つた馬鹿者でも無いから、満更その自分の一生に就いて思慮を費《つひ》やさぬ事も無いので、時にはいろ/\その将来の事を苦にして、自分の家の没落をも何うかして恢復《くわいふく》したいと思つた事もあつたらしい。其証拠には、それから、大凡《およそ》一年ばかり経つと、丸で人間が変つたかと思はれるやうに、もうふつゝりと
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