傍に行つて見ると、体がぐたりとして水涕《みづつぱな》を出したまゝ、早既に締《こと》が切れて居る。驚いて、これを村の世話役に報告する、湯田中の重右衛門に使を出す、と、重右衛門は遊廓の二階で、大睾丸を抱へて大騒を遣つて居る最中だつたさうで、祖父《ぢゝ》が死んだといふ悲むべき報知を聞いても、更に涙一つ滴《こぼ》さうでもなく、「死んで了つたものは仕方が無え、明日帰つて、緩《ゆつく》り葬礼《ともれひ》を出して遣るから、もう帰つて呉れても好い」との無情な言草には、使の者も殆《ほとん》ど呆《あき》れ返つたとの事だ。
兎に角重右衛門は此頃からそろ/\評判が悪くなつたので、その祖父の孫に対する愛を知つて居る人は、他村の者までも、重右衛門の最後の必ず好くないといふ事を私語《さゝや》き合つたのである。
祖父が死んだので、父親母親は一先《ひとまづ》村へ帰つて、少時《しばらく》其家に住んで居た。が、この親子の間柄《あひだ》といふものは、祖父が余り過度に愛した故《せゐ》でもあらうが、それは驚くばかり冷《ひやゝ》かで、何かと言つては、直《ぢ》き親子で衝突して、撲《なぐ》り合ひを始める。仲裁に入ると、その仲裁に入
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