で、藤田の系統《けつとう》を継《つ》がしむる為めに、二人は他の家から養子を為なければならなかつた。今の重右衛門の父と言ふのは、芋沢のさる大尽の次男で、母は村の杉坂正五郎といふものの三女である。何方《どちら》も左程悪い人間と言ふではないが、否、現に今も子息《むすこ》の事を苦にして、村の者に顔を合せるのも恥しいと山の中に隠れて出て来ぬといふやうな寧《むし》ろ正直な人間ではあるが、さりとて、又、祖父祖母のやうな卓《すぐ》れて美しい性質は夫婦とも露ばかりも持つて居らなかつたので、母方の伯父《をぢ》といふ人は人殺をして斬罪《ざんざい》に処せられたといふ悪い歴史を持つて居るのであつた。で、この夫婦養子の間《なか》に間もなく出来たのが、今の重右衛門。子の無い処の孫であるから、祖父祖母の寵愛《ちようあい》は一方《ひとかた》ではなく、一にも孫、二にも孫と畳にも置かぬほどにちやほやして、その寵愛する様は、他所目《よそめ》にも可笑《をか》しい程であつたといふ。処が、この最愛の孫に一つ悲むべきことがある。それは生れながらにして、腸の一部が睾丸《かうぐわん》に下りて居る事で、何うかしてこの大睾丸《おほきんたま》
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