由が無くてはならぬ。その理由は先天的性質か、それとも又境遇から起つた事か。
種々に空想を逞《たくまし》うしたが、未だ其人をさへ見た事の無い身の、完全にそれを断定することが何うして出来よう。遂《つひ》に思切つて、そして帰宅すべく家路に就いた。路は昼間|小僮《せうどう》に案内して貰つて知つて居るから別段甚しく迷ひもせずに、やがて緑樹の欝蒼《こんもり》と生ひ茂つた、月の光の満足にさし透《とほ》らぬ、少しく小暗《をぐら》い阪道へとかゝつて来た。村の方ではまだ騒いで居ると見えて、折々人声は聞えるけれど、此の四辺《あたり》はひつそりと沈まり返つて、木《こ》の葉《は》の戦《そよ》ぐ音すら聞えぬ。自分は月の光の地上に織り出した樹の影を踏みながら、阪の中段に構へられてある一軒の農家の方へと只《たゞ》無意味に近づいて行つた。
すると、その家の垣根の前に小さな人の影があつて、低頭《うつぶき》になつて頻りに何か為て居るではないか。勿論家の蔭であるから、それと分明《はつきり》とは解らぬが、その影によつて判断すると、それは確かに大人で無いといふ事がよく解る。自分は立留つた。そして樹の蔭に身を潜めて、暫《しば》
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