「本当に左様《さう》でも為《し》て貰はねいぢや……」
 猶《なほ》少し行くと、

「まご/\してると、己《おら》が家《とこ》もつん燃されて了ふかも知んねえだ。本当にまア、何うしたら好い事だか」
「困つた事だ」
 とさも困つたといふやうな調子。
 聞流して又少し歩いた。
「重右衛門がこんな騒動《さわぎ》を打始《ぶつぱじ》めようとは夢にも思ひ懸けなかつたゞ。あれの幼い頃はお互《たげへ》にまだ記憶《おぼ》えて居るだが、そんなに悪い餓鬼《がき》でも無かつたゞが……」
 かう言つたのは年の頃|大凡《およそ》六十五六の皺《しわ》くちやの老婆であつた。それに向つて立つて居るのも、これも同じく其年輩らしい老婆の姿で、今しも月の光にさも感に堪へぬといふ顔色《かほつき》を為《し》たが、前の老婆の言葉を受けて、「本当でごすよ。重右衛門は、妾《わし》の遠い親類筋だで、それでかう言ふのではごんせぬが、何アに、あれでも旨《うま》くさへ育てれや、こんな悪党にや為《な》りや仕ないんだす。一体|祖父様《ぢゝさま》が悪かつただす。余《あんま》り可愛がり過ぎたもんだで……」
「だから、子供《がき》を育てるのも、容易《ばか》
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