つて仕舞つたでがすア」
「年齢《とし》は何歳《いくつ》位?」
「まだ漸《や》つと十七位のもんだせう」
「それが捕へる事が出来ないとは! 高が娘《むすめ》つ子《こ》一人」
「知らない人はさう思ふのは無理は無いだす。高が娘《あま》つ子《こ》一人、それを捕へる事が出来ぬとは、余り馬鹿/\しくつて話にも何にも為《な》らない様だが、それを知つて御覧なされ、それは実に驚いたもので、今其処に居たかと思ふと、もう一里も前に行つて居るといふ有様、若い者などがよく村の中央《まんなか》で邂逅《でつくは》して、石などを投《はふ》りつけて遣《や》る事が幾度《いくたび》もある相だすが、中々一人や二人では敵《かな》はない。反対《あべこべ》に眉間《みけん》に石を叩《たゝ》き付けられて、傷を負つた者は幾人《いくたり》もある。それで此方《こつち》が五人六人、十人と数が多くなると、屋根でも、樹でも、する/\と攀上《よぢのぼ》つて、丸で猫ででもあるかのやうに、森と言はず、田と言はず、川と言はず、直ちに遁《に》げて身を隠して了ふ。それは実に驚くべき者ですア」
此時、ふと、
「やあ!」
と言つて庭から入つて来た者があつた。見
前へ
次へ
全103ページ中40ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
田山 花袋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング