もて》へと押し出された。
押出されて、更に驚いた。
夢では無いかと思つた。
何うです、諸君。全村が丸で火※[#感嘆符三つ、365−下−12] 鎮守の森の蔭に一つ。すぐ前の低いところの一隅《かたすみ》に一つ。後に一つ。右に一つ。殆ど五六ヶ所から、凄《すさま》じい火の手が上つて、それが灰色の雨雲に映つて、寝惚《ねぼ》けた眼で見ると、天も地も悉《こと/″\》く火に包まれて了つたやうに思はれる。雨は歇《や》んだ代りに、風が少し出て、その黒烟《こくえん》とその火とが恐ろしい勢で、次第に其領分をひろめて行く。寺の鐘、半鐘、叫喚、大叫喚※[#感嘆符三つ、365−下−18]
自分は後の低い山に登つて、種々《いろ/\》なる思想に撲《うた》れながら一人その悲惨なる光景を眺《なが》めて居た。
実際自分はさま/″\の経験を為たけれど、この夜の光景ほど悲壮に、この夜の光景ほど荘厳に自分の心を動かしたことは一度も無かつた。火の風に伴《つ》れて家から家に移つて行く勢《いきほひ》、人のそれを防ぎ難《か》ねて折々発する絶望の叫喚《さけび》、自分はあの刹邪《せつな》こそ確かに自然の姿に接したと思つた。
諸君!
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