』
此方の老人は、ぞろ/\とあとについて來る群を見渡して、『かなりに大勢だな。』
『おう、こんな大勢になつたぢや。作の組と、政の組とに、向うで出逢つたでな……。おぬしは何處から來た?』かう言つたが、南部に行つて去年歸らなかつた老婦達の群の中に雜つてゐるのを見て、『おう、おぬしも歸つて來たぢやな。去年は歸らねえし、たよりはなし、何うかしたかと思つて案じてゐたがや。』
また見廻して、
『息子はな?』
『死んだがや。』
老婦の眼からは見る/\涙が流れた。
彼方の老人の頭領と老婦とは、長い間立つて話した。頭領の點頭いたり、眼をしばたゝいたりするのが此方から見えた。『さうかや、氣の毒なことをしたなア。若い好い息子ぢやつたに……それから、他の衆は何うしたな?』
『上州でわかれたが、もう其處等に來てゐべいよ。』
『さうかな。』
二人は猶立つて話した。
この群は二組三組其處此處で落合つたゞけに、息子達も娘達も夫婦連も子供達も非常に多かつた。誰れも皆鍋と道具とバケツとを負つて、木の枝の杖をついてゐた。
『まア、無事で好かつたな。』
『おめいさん達も。』
『うんと、貯めて來たかな。』
『何うし
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