ねじパンのような束髪の上を、恰度《ちょうど》木馬を飛越《とびこ》える要領で、飛び越えてやりたいような衝動を感じるほど、二人は元気でした。わけもなくお祭のような気がして、気の弱いAも、なんだか嬉《うれ》しくなってきたのです。
それに年末の売出しで、景気づけの紅提燈《べにぢょうちん》がずらりと歩道の上にかかって、洋品店のバルコニーでは楽隊がマーチをやっていました。中学生達は、口笛で、足拍子をとりながら、肩をくんで、たッたッたッと歩きました。
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けむりもみえずウ くももなく
かアぜもおこらず なみたたず
かがみのごときィ こうかいはァ
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そうです。ふたりの学生は、一杯帆に風をはらんだ船のように、肺臓に一杯空気をふくらませて、出帆しました。
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かアぜもおこらず なみたたずウ
たッ たッ たッ
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小さな中学生達の航海は、大通《おおどおり》を真《まっ》すぐに歩くことよりも、人の知らないような航路をとる方が面白いに違いないと思われました。それで、二人はそうしました。
「この芋の山はどうだい!」そこは青物
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