誰が・何時・何処で・何をした
竹久夢二

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)どこへ往《い》くんだろうね

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)乗合|自働車《じどうしゃ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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 二人の小さな中学生が、お茶の水橋の欄干にもたれて、じっと水を見ていました。
「君、この水はどこへ往《い》くんだろうね」
「海さ」
「そりゃ知ってるよ。だけど何川の支流とか、上流とか言うじゃないか」
「これは、神田川にして、隅田川に合《がっ》して海に入るさ。」
「そう言えば、今頃《いまごろ》は地理の時間だぜ、カイゼルが得意になって海洋奇談をやってる時分だね」
 Aの方の学生がずるそうに、そう言い出したので、Bの方も無関心でいるわけにゆかないものですから、わざと気がなさそうに、
「ああ」と言いました。この二人の小さな中学生は、今日学校を脱出《エスケープ》したのです。というのは、この学校では八時の開講時間が一分遅れても、門をがたんと閉めて生徒を入れないほど万事やかましい学校でした。Aは昨夜
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