り]
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少年「おじさん、早く走らないと、また兎が逃げますよ」
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少年兎に近づきながら、「万歳、万歳。兎さんもう出ても好《い》いよ」
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少女「ずいぶん心配したわ」
兎「やれやれ、ほんとに危《あぶな》い所を助かりました。どうもありがとうございます。」
少女「よかったわね」
少年「うまくいったね」
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少年を上手に、兎をまん中に、三人手をつなぎ舞台の前へ進み。
[#ここで字下げ終わり]

    兎の挨拶

 御見物のお嬢様坊ちゃまがた、わたしはまあ何と言って皆様にお礼を申して好《い》いやら、あんまり嬉《うれ》しくて、申上げる言葉も知りません。
 これはみんな、この賢いお坊ちゃまの勇気と、親切なお嬢さまのお蔭《かげ》です。けれどあの草むらの蔭にかくれている時、皆様はほんとうにうまくわたしをかばって下さいました。もしも皆様のうちの誰《だれ》かが「兎《うさぎ》はあそこにかくれているよ」とでも仰言《おっしゃ》ろうものなら、わたしはまあどうなっていたの
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