ば好《い》いんだ。そんなこと言っているうちに、気の利いた兎は、穴の中へもぐって昼寝をするだろう」独語のように「この子は、よっぽど呑込《のみこみ》のわるい子だな」
少年「なあんだ、おじさんは、その白兎《しろうさぎ》を撃ちにきたの」
猟人「そうさ」
少年「だっておじさんは、いきなり兎を知らないかって言うんだもの、だからぼく、学校の復習《おさらい》をしちゃったのさ」
猟人「眼《め》をぱちくりやっている」
少年「ああ、その兎なの」
猟人「そうさ」
少年「その兎なら、もうよっぽど遠くへ逃げました。あの道の先の、ほら左側に赤松があるでしょう」
猟人「あるある」
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少女は猟人《かりうど》の方を見て笑っている。兎も出て来て見ている。
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少年「あすこを左へ曲って、桜の木が見えるでしょう」
猟人「ああ、見えるね」
少年「あの木から、一本、二本、三本、四本、五本、六本、十三本目の桜の下へかくれましたよ」
猟人「いや、どうもありがとう」
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猟人はあたふたと、上手へ走ってゆく。
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