ら改行天付き、折り返して3字下げ]
猟人「たしかこの辺へ逃込んだがなあ」(独語《ひとりごと》をしながら四辺《あたり》を見廻《みまわ》す)
少年(猟人《かりうど》の注意を自分の方へ向けるようにあせりながら)「おじさん兎の毛は白いんでしょう」
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
猟人「ああ、その白兎、白兎」
少年「耳が長いでしょう、おじさん」
猟人「そうそう耳が長いね」
[#ここから3字下げ]
猟人、銃を杖《つえ》にして話し出す。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
少年「ね、おじさん、兎の尻尾《しっぽ》は短いでしょう」
猟人「短いとも、これんばかりさ」
少年「それから、前脚が短くて、後脚が長いでしょう」
猟人「短くって、長くって」猟人は、自分が何をしているかを思出《おもいだ》して、「坊ちゃん、ぼくはその兎を探しているのだよ」
少年「おじさん、その兎はやっぱり赤い眼《め》を持っているでしょう」
猟人「ぼくは、坊ちゃんの博物の復習《おさらい》をしているんじゃないよ。一体その兎は……」
少年「白兎ですね。おじさん」
猟人「白兎ですよ。何遍それを言え
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