少女「そうね」(耳をすます)
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歌が終ると、下手から一匹の兎が呼吸《いき》をきらしながら走って出る。
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兎「助けて下さい。怖い猟人がわたしを撃ちにくるんです」
少年「その猟人はどこにいるの」
兎「あれあの坂をいま上ってます。もうじきここへ来るでしょう。どうぞわたしを助けて下さい。」
少女「まあ、可哀《かあい》そうね。兄さんどうしたら好《い》いでしょう」
少年「よし、きっとぼくが助けてあげるよ」
兎「ほんとに、坊ちゃんありがとう」
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猟人撃方の構えに銃を持って、下手より急ぎ登場。
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少女「あら兄さん」
少年「あ、来たな」鋭く少女に「はやく、かくして、かくして」
猟人「坊ちゃん、兎《うさぎ》を知りませんか」
少年「なんですか」
猟人「兎を知りませんか」
少年「知っていますよ、おじさん」
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この対話の間に、少女は兎をほどよき叢《くさむら》にかくす。
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[#ここか
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