わたどの》に
散《ち》りくる花《はな》を舞扇《まひあほぎ》
うけて笑《ゑ》みたる「歌麿《うたまろ》の
女《をんな》」の青《あを》き眉《まゆ》を見《み》き。

冬《ふゆ》の夜《よ》の、夢《ゆめ》一《ひと》つはかくなりき。
黒《くろ》き頭巾《づきん》を被《かぶ》りたる
人買《ひとがひ》の背《せ》に泣《な》いじやくり
山《やま》の岬《みさき》をまわる時《とき》、
「廣重《ひろしげ》の海《うみ》」ちらと見《み》き。
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 雪《ゆき》の降《ふ》る日

雪《ゆき》の降《ふ》る日《ひ》は、駒鳥《こまどり》[#ルビの「こまどり」は底本では「こま り」]の
紅《あか》い胸毛《むなげ》のおど/\と
風《かぜ》に吹《ふ》かれるやるせなさ。

雪《ゆき》の降《ふ》る日《ひ》に、小雀《こすヾめ》は
赤《あか》い木《こ》の実《み》が食《た》べたさに
そっと見《み》に出《で》るいぢらしさ。
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 揺籃《えうらん》の記臆《きおく》

(ねんねしなされ。まだ日《ひ》は高《たか》い
暮《くれ》りやお寺《てら》の鐘《かね》がなぁる。)

村《むら》のはづれにちら/\するは
虫《むし》か蛍《ほたる
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