術について語ることを恥とする。
8
藝術の傳統を重じなければならぬとは思つてゐない。しかし傳統の中に流れてゐる、永遠なるものには頭がさがる。
とてつもない新しい作品をその樣式や技巧の奇怪なるために笑ふわけにはゆかない、屡々そこに永遠なるものが影をさしてゐるから。
9
若い日本畫家の中には、粉本の中の傳統を古しとなし、ぎこちない日本畫の材料で外國風な描寫をしようとあせつてゐる。彼は、傳統と共に、永遠なるものまで捨てたのだ。
ある西洋畫家の中には、東洋的なものをすべて善しとなし、永遠なるものの代りに黴の生えた趣味だけを眺めて、松籟の聲か何かを、とても寂しがつて聞いてゐる。
10
水泳の稽古をしてゐるのを見てゐると、漁師の子供は、いきなり水の中にもぐることからはじめる。素人の大人は、のつけから波に乘つて泳ぐことを急ぐ。前者はよく水を理解して溺れることはない。後者はいつまでたっても泳げないか、よし泳げても屡々溺れる。
ある日、北の方の田舍から、自分の描いた習作を携へて、見てくれと言つて、私を訪ねた青年があつた。
「この手は、ルーベンスの素描
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