ら若く
「ま、どうしよぞいの」と泣《な》きいれば
襟足《えりあし》しろくいぢらしく
人形の小春《こはる》もむせびいる。
もののあはれかふるあめか
もらひなみだの母の袖《そで》。
[#改丁、挿し絵入る、69]
[#改丁]
雪
赤いわたしの襟巻《えりまき》に
ふわりとおちてふときえる
つもらぬほどの春の雪。
これが砂糖《さたう》であつたなら
乳母《うば》もでてきてたべよもの。
ロシア更紗《ざらさ》の毛《け》布団《ぶとん》を
そつとぬけでてつむ雪を
銀《ぎん》のかざしでさしてみる
お染《そめ》の髪《かみ》の牡丹《ぼたん》雪《ゆき》。
七|番《ばん》蔵《ぐら》の戸《と》のまへで
手招《てまね》きをするとうじさん
顔ににげない白い手で
ひねり餅《もち》をばくれました。
納戸《なんど》のおくはほのくらく
紀州《きしう》蜜柑《みかん》の香《か》もあはく
指にそまりし黄《き》表紙《べうし》の
炬燵《こたつ》で絵本《ゑほん》をよみました。
窓《まど》からみれば下町《したまち》の
角《かど》の床屋《とこや》のガラス戸《ど》に
大阪《おほさか》下《くだ》り雁二郎《がんじろ》の
春《はる
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